教習所に9ヶ月間いた俺が、免許取得までの道のりを説明する②
お久しぶりです。皆さまご機嫌はいかがでしたでしょうか。
かれこれ、前回の投稿から3ヶ月弱もが過ぎてしまっていました。
なんとこれが今年初投稿になります。今更ながら明けましておめでとうございます。
やはり、ズボラに管理しているとブログは続かないものですね…
今後はスパンをしっかりと決めて、定期的な更新を心がけてゆきたいと思います。
さて、前回から教習所での体験談を綴っているのですが、この第二回では、実に仮免試験についてお話ししていこうと思います。
早速見てゆきましょう。
②仮免
俺が仮免試験を受ける頃には、入校した時にやかましかったあのセミの鳴き声はすっかりと消え失せていた。
というか、虫が地表に存在出来るような時期ではなくなっていた。
息も白くなる真冬だったのである。
夏に入校した教習生が冬に仮免試験を受けているということが、教習のテンポとして果たしてどれほどのものなのかは分からない。
しかし、人類が車を発明するのに19世紀を費やしていることから考えると、これは目覚ましく早い成長スピードであると言えるだろう。俺は全てを良しとした。
仮免受験資格を得るまでには、いろいろあった。
アンパンマンを見てたら教習に遅刻したり、S字クランクがどうしても通れず、親に泣きながら電話したら同情して米(5kg 無洗米)を送ってくれたりした。
しかしながら、そんな困難を乗り越えてついに仮免試験である。
一番乗りで受験手続きを終わらせ待合室で待っていると、いよいよ試験開始の時刻となった。
受付「それでは受験生の方は外に出てください」
教習車の隣に教官と並ぶ。俺の車は三号車で、その日の受験生の中では最後尾での発進だった。
教官「よろしくお願いします」
俺「よろしくお願いします」
この挨拶以降、試験が終了するまで教官からは一切の助言が与えられない。
全ての判断を自分自身で行わなければならないのだ。
いつもの手順に習って、まずは入念に安全確認をすることにした。
車の下の猫良し。シートベルト良し。バックミラー良し。座席良し。発進。
ひとまずは減点なしのスタートを切ることができ、いよいよ運命の仮免試験が始まった。
車が動き出した途端に、様々な不安が一気にこみ上げてきた。
コースが頭から飛んでしまわないか、苦手なS字を通ることができるのか。緊張でハンドルを握る手が徐々に汗ばんできたが、俺はすぐにあることに気づいた。
そう、先に発進した教習車のスピードが想像以上に遅いのである。
時間をずらして発進したはずだったが、前の教習車にはあっという間に追いついてしまった。
これは思わぬ僥倖だった。俺は勝利を確信した。
このスピードならば、後ろから付いてゆくだけでコースを間違える心配はない。S字も脱輪することなく渡りきることが出来るだろう。
こみ上げる笑いを必死にこらえながら(笑ったら減点されると思ってた)、俺は最初の右折を手前にウィンカーをつけて赤信号を待っていた。
ー勝った。俺は茨城の鬼畜に勝ったのだ。
しかし、そんな油断を鬼畜たちが見逃すはずもなかった。悲劇は当然のように起きた。
信号が青に変わったにも関わらず、対向車が止まったまま、何やら中で教官と教習生とで揉めているのである。
車に乗ったことがある人ならばお分かりかもしれないが、これはかなり厄介な状況だ。
何故ならば、道路交通法には原則として、右折車は直進する車の進行を妨げてはならないというものがあるためである。
つまり、右折をしたい俺の車は、対向車のおたんこなすが前に進むまで、曲がることが出来ないのだ。
糞食らえ。
もちろん、日常での運転であれば
「行かない?行かないよね。じゃあ先に曲がるよ」
と、簡単に済む話なのだが、今回に限り試験中なので早計には動くことができない。
一瞬、目眩がしたが、ここで動揺してはいけない。落ち着いて、俺は対向車の動きを待つことにした。
待っていると、幸い対向車の教官(以下、対教官)と目があった。
対教官「(…行っていいよ!)」
俺「(対教官…!)」
対教官がジェスチャーで、「どうぞ」と道を譲る動作をしたので、俺は安心して右折することができた。
繰り返すが、対教官がジェスチャーで、「どうぞ」と道を譲る動作をしたので俺は右折ができたのである。
俺は軽く会釈をして、先へと進んだ。
その後の運転は順調そのものであった。
ほとんど減点されることもなく、苦手としていたS字・クランクも脱輪することなく渡りきることができた。
始まってしまえばあっという間で、気づけば俺の教習車はゴール地点へと到達していた。
会心の運転を成し遂げた俺は余裕綽々で、エンジンを切った。
教官「はい。じゃあ車から降りて」
俺「はい!」
これにて実技試験は終了である。
教習所では、車を降りた後に教官から一言アドバイスをもらうことになっているので、
教官からお褒めの言葉をもらうのを忘れないようにした。
教官「〇〇君さ」
俺「はい!」
教官「何でさっき対向車より先に曲がったの?」
俺「は?」
何を言いたいのか一瞬理解し兼ねたが、さっきのイカレポンチの糞対向車のことだと遅れて理解した。
俺「ああ、だってあれは止まっていt」
教官「前の車が曲がったからって、君も一緒に曲がったらダメでしょwww」
じゃあてめえはそこで一生待ってろ。
年甲斐もなく、憤慨しそうになった。
進む気のない対向車なんか気にして止まっていたら、後続の車にとんでもない迷惑がかかるに決まっているではないか。
腹に据えかねた俺は、一応控えめな抗議をすることにした。
俺「でも対向車の教k」
教官「確かに『どうぞ』ってやってるように見えたかもしれないけど、そんなの分から ないよ」
もう頼むから家ですっこんでてくれ。
じゃああのシチュエーションで他に何を表してるんだよいい加減にしとけよほんまに「お済みのお皿お下げしますか」とでも言いたかったのか?だったら皿を下げる前にお前が下がれぶっ飛ばすぞ
俺が教習所という機関を一切信用しなくなった瞬間である。
その後もピーチクパーチク何とか言っていたが、内容は一切頭に入ってこなかった。
俺は絶望の面持ちで待合室へと帰った。
長くなりそうなので後のことは省略するが、
ほとんど諦めていた試験結果については、何故か受かっていた。
きっとさっきの対教官が俺の代わりに弁明してくれたのだろう。
俺は対教官の方向に向かって1日に5回お祈りすることを決意した。
ちなみに教官の方向には必ず足を向けて寝ることも決意した。
かくして、俺は魔の第一段階から解放されたのである。
長い長い2016年が、終わりを告げようとしていた。
続く